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心と身体のバランスを整える食の瞑想

食べているという行為に意識を集中

みなさんは食事の最中、食べている料理の味わいに集中されているでしょうか?

 

実は、私はこれが苦手です。

 

口中で食物をゆっくりと咀嚼、反芻し、その味わいに触れて、様々な感覚を楽しんでから、飲み下すということができていないのです。目前に並んだ新しいものに目が行き、次々と口に入れ、適当に噛んで飲み込んでしまうのです。

 

そのことに気がついたのは、「食べる瞑想」というユニークな行為に出会ってからでした。今、自分が食べているという行為に意識を集中させること。これは自身の「からだ」と対話するためのいちばん基本的なレッスンであると言われています。それが「食べる瞑想」です。

「食の瞑想」のやり方

「食べる瞑想」のやりかたはとても簡単でした。ふつうに食事を摂る前に、料理の一つを一箸、口に運び、目を閉じて意識を口中に集中させるだけです。

 

口中に起こる様々な感覚、香り、舌触り、歯切れ、味覚などを感じて、さらにそれらの感覚に呼び起こされた様々な思い出や感情に浸ってみる、そういう試みです。

 

たとえば、「いま食べたサンマの一口から・・・、うん、脂がのっている、どのあたりの海で獲れたのだろうか、実は子供の頃、サンマの小骨やはらわたは苦手だった、平気になったのはいつの頃からだろう、いまでははらわたの旨味がこんなに愛おしい」とか。

 

こうして食物のほんのひとつまみを味わいつくして瞑想したあと、飲み込んでそっと目を開きます。いまこの瞬間、短い間ですが、「からだ」と「こころ」が同じことに集中していたのです。

 

いまこの瞬間を「こころ」と「からだ」を一つにして生きる。これは仏教の修行の一つだそうです。「からだ」は常に今を生きていますが、「こころ」は過去、未来、現在を絶えず行き来しています。

 

「食の瞑想」は、ついバラバラになりがちな「からだ」と「こころ」を意識的に今のこの時間につなぎとめておく試みです。食前のわずかなひとときを心と身体のバランスを整えるために活用してみてはいかがでしょうか。