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全ての乳酸菌が健康に役立つわけではない

乳酸菌は謎の多い微生物

乳酸菌

テレビや新聞で乳酸菌という言葉を見たり聞いたりしない日が無いぐらいに、乳酸菌は身近な微生物です。

 

しかし、乳酸菌についてどれぐらい詳しい知識を私たちが持ち合わせているのか疑問です。

 

すでに、乳酸菌は身体に良いものという理解が広く浸透していますが、具体的にどのような点で効果が得られるのか、また、私たちの身のまわりの食生活にどのように関わっているのかについて、具体的なことについては意外に理解が進んでいないようです。

 

乳酸菌はフランスのパスツールという偉大な微生物学者が発見して以来、1世紀余りしか経っていないため、大腸菌や病原性の細菌に比べて、まだまだ未知の部分が多い微生物です。

乳酸菌の定義

そもそも乳酸菌という菌株は存在しません。

 

乳酸菌という名称は特定の細菌を指すのではありません。

 

また、分類学上の呼び名でもなく、単なる慣用的な呼び名にすぎないのです。

 

以前は、糖を菌体内で代謝して最終的に乳酸を生成する微生物を乳酸菌と呼んでいました。

 

しかし、腸内細菌として有名な大腸菌でもわずかな乳酸を生成しますので、これを乳酸菌と呼ぶのは奇妙です。

 

現在、乳酸菌の定義の一つとして、菌体内で消化された糖の50%以上が乳酸に代謝生産される細菌を乳酸菌と呼んでいます。

人の健康に貢献してくれる乳酸菌

普段何気なく乳酸菌と呼んでいる細菌ではありますが、非常に多種多様な微生物であり、まだまだわからないことが多い微生物なのです。

 

乳酸菌は多量の乳酸を産生することによって、疾病などを引き起こす腸内の悪玉菌を駆逐して腸の働きを整える整腸作用があることが知られていますが、人の健康に大きな貢献をする微生物であることがわかってきました。

 

乳酸菌に人の免疫を賦活する作用やアレルギーを低減する作用があることなどが明らかになってきたのです。

 

そのため、これまでの乳酸菌飲料や乳製品を製造する発酵生産菌として利用すされるばかりでなく、プロバイオティクスと呼ばれる生きたまま腸に届く有用な細菌として利用するために、さまざまな飲料や食品に添加されるようになってきました。

全ての乳酸菌が健康に役立つわけではない

しかし、すべての乳酸菌にこのような働きがあるわけではありません。

 

同じ属で同じ種の菌株でも、ある菌株には有用な作用があっても、他の菌株にはそのような作用が全く見られないことが多々あるようです。

 

すなわち、菌株の特異性が著しく見られるのが乳酸菌の特徴です。

 

したがって、すべての乳酸菌が人の健康維持に役立つわけではありません。

 

このような菌株による特異性が乳酸菌にあることは不思議なことです。

ビフィズス菌が乳酸菌ではない理由

善玉菌として有名なビフィズス菌は乳酸菌と思われていますが、実はビフィズス菌は糖の40%しか乳酸を生成しておらず、それ以上に酢酸を多く生成しますので、乳酸菌のグループには入らないわけです。

 

一般に乳酸菌とされている細菌は現在、およそ30属ほどあります。

 

発酵食品を生産する菌の多くが属するラクトバチルス属や、虫歯の原因となる菌が属するストレプトコッカス属などはよく耳にする属の乳酸菌です。

 

しかしまだ、未知の乳酸菌が存在する可能性があり、多くの研究者がその探索に努力しています。