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乳酸菌とはどんな生き物?

乳酸菌の定義

乳酸を産生する乳酸菌

乳酸菌は、2μm(1mmの1000分の2)程度の大きさで、目には見えないほど小さな生き物です。

 

では、乳酸菌は、どのような特徴を持った生き物で、私たち人間とどのように関わってきたのでしょうか。

 

まずは、乳酸菌の定義から始めます。

 

乳酸菌は「糖を発酵して乳酸を産生する細菌」のことを言います。

 

乳酸菌が発酵する糖とは、例えば、牛乳に含まれる乳糖や、果物や野菜に多く含まれるブドウ糖や果糖などが挙げられます。

 

乳酸菌は、これらの糖を取り込み、発酵という過程を通して、乳糖を作り出します。

乳酸を産生する菌すべてが乳酸菌ではない

ただし、乳酸を作る細菌がすべて乳酸菌かというと、そうではありません。

 

正確には、取り込んだ糖に対してどのくらいの量の乳酸を作るか、糖をはじめとして他にどのような栄養素を利用できるかというような情報が重要です。

 

細菌の細胞や表面の構造、細菌の形、生存できる環境などのさまざまな特徴から、大腸菌、結核菌、放線菌など地球上にいる多種多様な細菌たちと区別されています。

 

最近では、16rRNAという遺伝子の配列を分析することで生物を分類することが一般的になり、乳酸菌においても16rRNA遺伝子の違いによる分類が基盤になっています。

 

乳酸菌は糖を発酵して乳酸に変えることで生きるためのエネルギーを作り出しています。

 

糖は乳酸菌にとって欠かすことのできない栄養素ですが、糖の他にも菌の体を構成するアミノ酸や、代謝に関わるビタミン・ミネラルも、乳酸菌が生きる上で必須の栄養素です。

 

そのため、乳酸菌はこれらの栄養が豊富にある乳や果汁、花の蜜、樹液、植物の根・茎・葉などに生息しています。

乳酸菌と人類とは長い付き合い

乳酸菌は、古来から、有用な微生物として、人間の生活と深く結びついてきました。

 

特に、発酵乳への利用の歴史は古く、人類が牧畜を始めた紀元前5000年頃から乳酸菌の発酵乳が自然に利用されていたと考えられています。

 

乳酸菌は自然環境中に広く生息していて、乳の中でとても生息しやすい性質を持っていますので、乳を保存する過程で環境中の乳酸菌が自然に乳に混入して発酵乳が生まれたものと考えられます。

 

世界中には、牛乳以外に、ヤギ乳、馬乳、水牛乳などさまざまな乳を発酵した特徴的な発酵乳があります。

 

東欧のケフィア、インドのダヒ、モンゴルのクミスなど、現在もよく知られる発酵乳が各地に伝わっています。

 

日本では、牛乳が一般的に食されるようになったのは、明治時代とされていますが、奈良時代には貴族の中で、牛乳から発酵乳にまで加工した食品とされる、酪・蘇・醍醐が珍重されていたということが記録に残っています。

保存性を高めておいしくしてくれる乳酸菌

なぜ、これほどまでに発酵乳は人間の生活に定着したのでしょうか。

 

乳酸菌で発酵乳が作られると、乳の中に乳酸が作られます。

 

すると、乳酸の効果で、雑菌が繁殖しずらくなるため腐敗が抑えられ、発酵乳としてしばらくの期間、食することが可能になります。

 

もちろん、当時の人々が、その仕組みを理解して、発酵乳を作っていたわけではないはずです。

 

食糧の安定的な確保が生死を分けるような過酷な生活の中で、乳酸菌が上手に利用されていたと考えられます。

 

また、乳酸菌によって発酵することで、酸味が醸成され風味が豊かになります。

 

この保存性向上とおいしさへの貢献という2つの点が、生活の中に発酵乳が定着することになった大きな理由と考えられます。

 

このように、古くから特に牧畜を中心とする生活を営んできた人々と、密接に関わってきた乳酸菌ですが、その存在が科学的に明らかにされたのは、近代になってからのことです。

乳酸菌の発見と研究

1780年になってようやく、発酵乳の中に乳酸があることが見出されました。

 

さらに、1857年、フランスの科学者パスツールが、この乳酸を作り出す菌(=乳酸菌)の存在を発見しました。

 

そして、1907年に、ロシアの微生物学者メチニコフによって「不老長寿説」が唱えられたことをきっかけに、乳酸菌と人の健康の関係が注目されるようになりました。

 

メチニコフは、コーカサス地方の住民の寿命が長いことに着目し、「コーカサス地方の住民の寿命が長いのは、伝統的な発酵乳を毎日摂取しているからだ」と考え、発酵乳を摂取することで免疫力が高まっているのではないかと考えたのです。

 

また、老化の原因を探る研究の中で、「老化は腸内腐敗により加速される」という仮設を立て、腸内腐敗を防ぐために、発酵乳の中に含まれる乳酸菌が腸内の腐敗菌の働きを抑えているものと考えました。

 

つまり、「発酵乳を摂取すると腸内腐敗が抑制されて長寿につながる」という考え方を唱えたのです。

 

そして、メチニコフは1908年に自然免疫と獲得免疫の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 

その後、現在に至るまで、世界中の研究者たちにより、乳酸菌の健康効果に関する研究が精力的に進められています。

 

近年では、乳酸菌の健康効果として広く知られている整腸作用の他にも、感染防御作用や、アレルギーの抑制作用、血圧調整作用など全身に及ぶ乳酸菌のさまざまな保険効果が人における試験において多く報告されています。