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誰でも持っている「食」の喜びの記憶

「食」に喜びを見いだせない若者たち

「食」は生き物にとって「命」そのものです。しかしながら、現在の私たちは食べるという根源的行為から、はるか遠いところにいきついてしまった感があります。

 

現代人は、食事にかける時間を極限まで削り、食べるという行為に喜びさえ見いだせなくてサプリメントのみで生きていられると考える若者が増えていることは見逃してはいけない現実です。

 

「食べること」は「からだ」が必要としているだけでなく、「こころ」を満たす喜びであることをもう一度、考え直してみる時期にきているのではないでしょうか。

甦る「食」の喜びの記憶

喜びは「脳」と「からだ」の求めるものが一致したときに最大化します。

 

人は子供の頃、本能のままに生き、食の「喜び」を享受しながら大人になります。食の「喜び」に関する思い出はじつは誰でもたくさん持っているのです。子供の頃の食べ物の話で盛り上がるのはそのためです。

 

昔食べた給食やおやつのこと、珍しい食べ物のこと・・・、これらは世代に関係なく甦ってくる「喜びの記憶」です。

 

「森のイスキア」で有名な、昨年亡くなった佐藤初女さんは、自殺を考えるほど追い込まれた人々を自宅に歓待し、一緒におにぎりを握って食べることで彼らのこわばった心をほぐし、生きるチカラを取り戻させました。

 

一緒に握るおにぎりは、かつて幸福だった食事の記憶を思い起こさせたのでしょうか、失意の人々が、そこに生きる希望の種を見たとしてもおかしくないのです。