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日本は鍋料理大国

鍋大国になった理由

鍋料理は、人類が煮炊きを開始した太古からの食事法で、今日では世界中の様々な鍋料理が国境や地域を超えて楽しまれています。鍋が煮炊きする料理の原点となった理由には、3つの大きな効用が考えられます。

 

1:食物をまるごと残らず食べることができる

2:煮炊きした知るや蒸気で体も大気も温まる

3:貴重な食料をみんなで分け合って食べられる

 

日本ではおよそ1万4千年前、縄文時代早期の遺跡から煮炊きに使われた土器と煮込まれた鹿の骨、鮭の骨などが発見されています。そして今の日本は世界に冠たる鍋大国です。

 

「日本の食生活全集」全50巻(農文協)には鍋(汁)料理が1500種類以上も紹介されています。我が国がこのような鍋大国になった理由には次のようなことが考えられます。

 

1:長く大家族制度があり、家屋の中央に囲炉裏をあつらえていた

2:国土が南北に長く、周囲を海に囲まれている地理的条件が食材の種類を豊かにしている

3:水が豊かできれいなため水を使用することに抵抗が無い

4:出汁(だし)の材料と開発力にすぐれていた

 

いずれにしても、日本人の食へのこだわりを垣間見れる事実ですね。

鍋は具材の旨味のハーモニー

今日ではいろんな種類の鍋つゆが簡単に手に入ります。そのスープを鍋に注いで温め、用意した具材たちを入れてやわらかくなるまで煮れば食べられます。

 

鍋はもともと栄養バランスの良い簡単食なのですから、作るのに何もかしこまる必要はないのです。鍋は高級料理で出汁をとるにも大変に手間がかかる、という幻想はこの際に捨ててしまいましょう。

 

鍋は「水で煮る」、ことが出発点です。出汁をとらなくてもたくさんの具材から出汁がでるのが鍋のひとつの大きなメリットです。

 

水で煮る、いわゆる「水煮」にしても、茹でる・煮る・ゆがく・炊く・湯通す・湯引く・煎ずるなど火の強さや火にかける時間の長さの加減があり、食文化の豊かさを表しています。出汁や味付けした割り下で煮込むのは鍋の進化形といえます。

 

さらに、ここに様々な具材を入れて具材が持っている旨味のハーモニーを煮出すのが日本の鍋の基本形といえるでしょう。その意味では、相撲部屋が発祥のちゃんこ鍋と、海山のいろんな幸をひとつの鍋に放り込むかたちの寄せ鍋が、日本の鍋のもっともポピュラーな姿といえそうです。

 

一方、具材の主人公はやはり動物性タンパク質ですが、肉か魚か選択が生じます。さて、みなさんはどちらがお好みでしょうか?

 

骨以外に余すところなく食べられる高級魚のあんこう鍋?あるいは鶏肉鍋の原点である博多水炊き?どちらも甲乙つけがたく美味しそうですね。

 

また、鍋食の栄養上の盲点になるのが炭水化物でした。今日の生活では、炊飯器でご飯が炊けますが、ひとつ鍋ではご飯が炊けません。手間をかけず鍋にほうりこむ具材として、麺類、餅類、練り物が上手に利用されるようになりました。その代表が秋田県のきりたんぽ鍋や、全国のお国柄で具材や出汁が個性的に発達したおでんです。

 

古代から今に至る鍋の魅力を知るにつけ、食欲が際限なく増してくるような気がしませんか?鍋には何か心の奥にぽっと灯がともるような温かさを感じてしまいます。寒くなったら、身も心も温まる鍋を囲んでみませんか?