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『パパは脳研究者』-子どもを育てる脳科学-

誕生から児童期までの「成長」

『パパは脳研究者』-子どもを育てる脳科学-
(池谷裕二 クレヨンハウス 2017)

子育ては理屈じゃない

池谷裕二さんは、東京大学薬学部教授で、大脳生理学の研究者ですが、何よりも『進化しすぎた脳』『海馬』『ココロの盲点』など、難しい科学の研究成果や考え方を、素人にわかりやすく解説する名人として有名です。ヒラキの脳科学の知識の90%は池谷さんの本から得ていると言って過言ではありません。

 

この『パパは脳研究者』ではその上、読者と同じ立ち位置まで下りてきて、ほとんどママ友同士のおしゃべりの感じで語られています。何せご自身が現在進行形で悩みつつ実践している子育てを題材にしているのですから。池谷先生は自らの生活体験を、時に研究者の脳に切り替えて、観察し、考察します。

 

子育てが理屈ではないことを日々肌で感じつつ、池谷さんの科学者の目は脳の「成長」という客観的な事実から背けることもありません。

 

子どもの反応や行為の変化に、脳の発達の証を読み取ります。そしてその繰り返しの中で、やはり「赤ちゃんの脳の成長を眺めることで、自分の脳の不思議さに気づくのです。ご飯を食べる、トイレへ行く、笑顔を作る、会話する、嫉妬する-。普段何気なくやっていることが、決して当たり前のことではなく、脳回路がもたらした奇跡なのだ、と-」という感慨を持つにいたります。

 

そのような奇跡の生き証人である子どもと、共に歩み格闘する親御さんたちへ、この本は温かく心強いエールになるに違いありません。