樹状細胞について
2020年10月13日
樹状細胞は抗原提示細胞
細胞の表面が木の枝のようにまわりに突き出ているので、樹状細胞という名前がつけられました。
この細胞も好中球、単球、マクロファージと同様にものを食べることができるので、一種の食細胞です。
未熟なうちは異物を食べて取り込む能力が高く、成熟するとともに食べる能力は減るのですが、取り込んだものを細かく分解して、それをあたかも「これが異物ですよ」というように細胞表面に示し、それを介してリンパ球を刺激する能力を獲得するようになります。
樹状細胞は抗原分解工場のようなもので、特殊な部屋の中で抗原をペプチド(アミノ酸が複数個つながったもの)に分解し、それを細胞膜表面にまで運搬してTリンパ球にこれが抗原ですよと示す役割をします。
この「抗原を提示する」現象は、お母さんが堅い食べ物をかみ砕いて、柔らかくして、子供に「はい食べなさい」と示すかのようです。
この抗原を提示する細胞のことを抗原提示細胞といいますが、その最も代表的なものがこの樹状細胞です。
樹状細胞は免疫システムの司令官
樹状細胞がリンパ球を刺激すると、状況に応じて2通りの相反する反応が見られます。
ひとつはリンパ球が活性化されて提示された抗原に対して強く反応し、その結果、そのリンパ球が増殖するというポジティブなもの。
病原体の侵入に際してリンパ球が働いて効率的な攻撃反応をするために必須の現象です。
もうひとつはリンパ球の働きが止まってその抗原に対して反応できなくなる、あるいは細胞が死ぬ、というネガティブなもの。
リンパ球が誤って自己を攻撃しないようにする安全制御機構のひとつです。
つまり、樹状細胞は、状況に応じて、リンパ球に対してアクセルにもブレーキにもなりうる細胞で、免疫系が織りなす演劇、オペラの中ではシナリオを変えうる役を持つとても大事な細胞です。