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免疫が無害なものに反応するアレルギー

アレルギーは哺乳類独自のトラブル

免疫は、私たちの体の守護神のようなものですが、ときに悪魔のような存在になることがあります。

 

人を含む哺乳類は、他の生物が持っていない健康上の悩みを抱えていますが、アレルギーはその一つです。

 

アレルギーは「免疫系が特定の抗原に対して過剰に反応する現象」と定義されていますが、アレルギー疾患は哺乳類になってから現れるようになった病気で、いわば免疫系が複雑になりすぎたために起こったトラブルです。

無害なものにも反応してしまうアレルギー

アレルギーを引き起こす原因となる抗原は、一般には病原性を持たないものが多く、スギ花粉に含まれるタンパク質も、アレルギーを持たない人にとっては全く無害な存在です。

 

ところが、一部の人にとっては、特定の植物の花粉(スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなど)を吸い込んだり、小麦粉、そば、卵、エビやカニ、フルーツ(メロンやマンゴーなどが知られている)などの食品を摂取した際に、免疫系が過剰に反応してしまいます。

 

反応する抗原の種類や症状の程度には個人差が大きいですが、花粉ではくしゃみ、鼻汁、目や皮膚のかゆみ、せきなどが。食べ物ではじんましん、ぜんそくなどの不快な症状がでます。

 

重篤な場合にはアナフィラキシーショックと呼ばれる急激な血圧低下や全身性の浮腫がお気、早急に治療しないと命を落とす危険が生じます。

免疫寛容とは

本来、免疫は「自分」と「自分ではないもの」を区別し、「自分ではないもの」を排除するしくみです。

 

しかし、重大な悪さをするわけではない花粉やダニなどに過剰に反応して猛攻撃をされても困ります。

 

また、食物まで異物として排除しようとすると、必要な栄養がとれなくなってしまいます。

 

そこで、体に有益なものや害のないものに対しては、攻撃しないようなしくみが備わっています。これを「免疫寛容」といいます。

3人に1人はアレルギー性鼻炎

アトピー性皮膚炎、食物アレルギーのどのアレルギー疾患は増加の一途をたどっています。

 

喘息は、大気汚染が大気汚染が改善されたことで1996年に約200万人であった患者数が2005年には約100万人に減少していますが、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーは、この10年間に2倍近く増加しています。

 

特にアレルギー性鼻炎は、国民病と言ってよく、軽いものを含めれば三人に一人は苦しんでいると言われています。

アレルギーのような過剰な免疫反応が起きる理由

アレルギーのような過剰な免疫反応は、なぜ起きるのでしょうか?

 

詳細なメカニズムについてはわかっていませんが、2つの可能性が考えられています。

遺伝的素因によるアレルギー

一つは、遺伝的に特定の抗体が多く作られやすい素因を持つために、スギ花粉などの抗原と激しい抗体抗原反応を起こすという説。

 

実際に、親子や兄弟間では同じアレルギー症状がみられることが多く、アトピー体質と関連する遺伝子の候補もいくつかみつかっています。

 

ただし、遺伝的素因だけではアレルギーが近年に急増した理由が説明できません。

IgE抗体を作るTh2細胞の増加によるアレルギー

2つ目は、衛生環境がよくなりすぎたために病原体に感染する機会が少なくなり、免疫細胞のバランスが崩れてアレルギー反応が起きやすくなったのでは、という説。

 

これは、優位なTh2細胞が作り出す過剰なIgE抗体が、アレルギーの原因になっている、としているのです。

 

アレルギー反応を起こしやすい人は、カビ・ダニ・花粉などの特定の抗原に対し、ヘルパーT細胞のうちTh2細胞がTh1細胞よりも活性化されやすい性質をもっています。

 

Th2細胞はB細胞にアレルギーの原因となるIgE抗体をつくらせるのが役割ですので、Th2細胞の割合がTh1細胞よりも増えすぎると、病原体以外の異物に過剰に反応し、アレルギーが引き起こされる、というのが第2の説です。

樹状細胞がアレルギーを抑えるカギ

樹状細胞にはさまざまなタイプのものがありますが、ある種の樹状細胞はT細胞がTh2細胞に分化するのを抑えてアレルギー症状を緩和させるように働きます。

 

また、未熟な状態の樹状細胞、つまり異物を認識して抗原提示を行う前の段階の樹状細胞にも、このような免疫の調整機能があることがわかりました。