免疫グロブリン面白情報
2020年06月01日
新型コロナウィルスの罹りにくさに「人種差」はあるの?
食品成分分析試験でお世話になったことのある免疫分析の会社から、免疫グロブリン欠損症の地域差と、新型コロナウィルスの発症率(重症化率)に興味深い関連性が見いだされた、というモノグラフリポート「免疫グロブリンA(IgA)からみた新型コロナウイルス感染リスクの可能性」が届いたので、要約紹介します。
筆者らは粘膜免疫の主体である分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)が各種アレルギー患者(スギ花粉症、通年性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息)では健常者に比べて有意に低いこと、スギ花粉症患者はインフルエンザワクチン接種の如何に関わらず健常者に比べて有意にインフルエンザ感染率が高いことを見出した。
IgAは上気道から侵入する細菌やウィルスに結合、凝集させて排除する。また毒素や細菌由来の酵素などと結合して無毒化する。
IgAに関して人種による差があるか調べたところ・・・一般に先天性免疫不全症候群は出生10万人に対し2~3人とごくまれな疾患であるが、例外的にIgA欠損症は頻度が高い。
このIgA欠乏者は、無症状で通常生活を送っているが、一旦ウィルス等の気道感染が起こると、その20%~30%が重篤な症状を呈する。
そして国別(地域別)でのIgA欠乏者の出現頻度は驚くべき数値になっている。現在までに調査されている範囲では
国・地域 | 出現率 |
---|---|
アラビア半島 | 143人に一人 |
スペイン | 163人に一人 |
ナイジェリア | 252人に一人 |
イギリス | 875人に一人 |
ブラジル | 965人に一人 |
アメリカ合衆国 | *223人~1000人に一人 |
中国 | *2600人~5300人に一人 |
日本 | *14840人~18500人に一人 |
*調査対象の地域や人種による違い
このように出現率は、新型コロナウィルスの地域別爆発的感染パターンとよく相関している。なお、IgAは65歳を過ぎると減少し、感染リスクが高まるので注意喚起が必要と思われる。
先の緊急事態終息宣言で、安倍首相は日本の新型コロナウイルス対策を自画自賛されていましたが、世界的な受け止め方は「(日本は)なぜあのような杜撰な対応で、これほどまでに被害者が少なかったのかはミステリーである」というものでした。もし分泌型免疫グロブリン欠乏症者が少ない、という「民族的」遺伝的形質がこの遠因だとしたら・・・
次の新型ウイルスの時には同じアドバンテージは私たち日本人にはない可能性もありますね。勝って兜の緒は締めておいたほうがよさそうですね