腸内フローラを整えるプレバイオティクス
2019年10月21日
食物繊維は善玉菌の好物
理想的な腸内細菌のバランスを維持し続けるにはどうすればよいのでしょうか?
腸内細菌のバランスを変動させる要因はいろいろありますが、もっとも影響が大きいのは日々入ってくる食べ物です。
腸内細菌の好きな食べ物が入ってくれば、善玉菌が増えて腸の生産性が向上します。
一方、腸内細菌の嫌いな食べ物が入ってくれば、悪玉菌がどっと増えてきて腸の生産性はガタ落ちとなります。
とにかく、腸内細菌のバランスは入ってくる食事内容によっててきめんに変わってしまうのです。
腸内で消化されにくく、腸内フローラを改善する食物繊維(難消化性成分)などは、プレバイオティクスと呼ばれています。
プレバイオティクス|腸内フローラを整える食物繊維
食物繊維を摂ることで善玉菌が増える環境がつくられます。
食べ物に含まれる繊維質が便秘予防に効果があるということは、古い時代から経験的に知られてきたことですが、栄養学の分野で初めから注目されていたわけではありません。
食物繊維は摂取しても吸収されずに排泄されてしまうため、「何の役にも立たない食べカス」のよういに見なされてきたのです。
しかし、体内で消化されない成分でありながら、その働きの重要性が評価され「第6の栄養素」と位置づけられています。
ただ、食物繊維を成分として見た場合、糖で構成されているため炭水化物の仲間に分類されます。
食物繊維が、炭水化物(糖質)・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルに続く「第6の栄養素」として公に認められるようになったのは、国が摂取基準を示すようになった2000年になって以降のことです。
ちなみに、食物繊維の1日の摂取基準は、男性20g以上、女性18g以上となっています。
健康長寿の人は食物繊維を多く摂っている
世界各地の長寿地域の食生活についての研究が進む中で、健康な長寿者の多くが食物繊維を多く含む食べ物を常食していることがわかってきました。
その一方で、戦後の日本では食生活が豊かになり、平均寿命も伸びましたが、ガンや生活習慣病、そして肥満などが増加したという現実があります。
野菜より肉の摂取量が増えた日本人。
肉類には食物繊維は全く含まれておらず、タンパク質は悪玉菌の栄養素となり、腸内に悪玉菌が増殖することになります。
食物繊維の腸内フローラ改善作用
一方、野菜類の食物繊維は、腸の蠕動を刺激し便通を促し、悪玉菌がつくる腐敗物質を便とともに体外へ排出する働きをもっています。
食物繊維をたっぷり摂取して便をたくさん出せば、悪玉菌もそれだけいっぱい出せることになり、腸内フローラが改善されるわけです。
また、胃で分解されずに腸に入った食物繊維の一部は、乳酸菌やビフィズス菌のエサとなってこれらの菌を増殖させたあと、酪酸などの有機酸になります。
この有機酸によって腸内は酸性になり、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌には良い生育環境となりますが、悪玉菌は生育しくにくなります。
さまざまな食物繊維の働きにより、腸内には善玉菌が棲みやすい環境がつくられ腸内フローラの細菌バランスがよくなります。
善玉菌を増やすには食物繊維を十分に用いた食事が有効で、食物繊維が多く含まれる食べ物は、穀類、豆類、乾物、根菜、海藻、きのこ類、ナッツ類などで、肉や魚には含まれていません。
食物繊維の機能性
最近指摘されている食物繊維が持つ機能として、次のようなことが挙げられます。
排便力増加
不溶性食物繊維が便のかさを増し、水溶性食物繊維が便をやわらかくし、蠕動・排便を促してくれる。
腸内フローラ改善作用
善玉菌が育ちやすい環境をつくり、悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整える。
過食抑制効果
食物繊維は胃内で膨張し、満腹感を生むため、食べ過ぎを防いでくれます。
血糖値上昇抑制効果
一緒に摂取した糖質がゆっくり吸収されるため、血糖値の急上昇を抑えてくれます。
胆汁酸吸着機能
コレステロールを原料とする胆汁酸を吸着して排泄するため、コレステロール値を下げることにつながります。
吸着作用
食物繊維には、ある種の老廃物を吸着して、便と一緒に排泄するよう働きます(デトックス効果)。
免疫調整作用
免疫細胞を活性化するなど、免疫力を高める作用があります。