食物繊維は腸内環境改善に役立つ栄養素
2019年10月14日
腸内環境改善に役立つ食物繊維
このページでは、腸内フローラの改善に役立つ食物繊維の働きについて、少し詳しく解説させていただきます。
食物繊維は、便秘や生活習慣病の予防・改善のために役立つ栄養素として認知されている栄養素ですが、人の腸内では消化・吸収されにくいため、かつては「栄養のない食べ物のカス」と考えられていました。
栄養素としてみた場合、食物繊維は「糖」の仲間であり、最近では食物繊維と糖質を合わせたものを炭水化物と呼ぶのが一般的のようです。
糖質は体の主要なエネルギー源として知られますが、同じ糖で構成される食物繊維は消化酵素によって分解されるこはほとんどありません。
そのため摂取してもエネルギーにはならず、腸の働きを助ける役割が与えられているのです。
もう少し具体的に言えば、炭水化物(糖質+食物繊維)は糖の結合のしかたによって「単糖類」「少糖類(二糖類、三糖類など)」「多糖類」に分けられます。
食物繊維はこのうちの多糖類の仲間で、ごはんやイモ類などの主成分であるデンプンと同様、多数のブドウ糖が結合することで構成されています。
もちろん、この食物繊維にも様々な種類がありますが、ここではその性質によって水に溶けない「不溶性食物繊維」と水に溶ける「水溶性食物繊維」に分けて説明します。
不溶性食物繊維の特徴
不溶性食物繊維は、摂取すると腸に未消化の繊維質が蓄積されて便のかさを増していくため、便通が促され、腸以内の腐敗物質と便が一緒に体外に押し出されやすくなります。
プレバイオティクスの効果という点では、この不溶性食物繊維が重要な役割を担っていると言えるでしょう。
植物の繊維質を構成しているセルロース、ヘミセルロース、リグニンが代表ですが、ゴボウ、キクイモ、タマネギ、ニンニクなど植物の根や球根などに多いイヌリンもここに含まれます。
イヌリンは血糖値の上昇を抑える効果が顕著であることが知られています。
水溶性食物繊維の特徴
一方の水溶性食物繊維は、摂取すると腸内の水分に溶けてゲル状になるため、栄養素の吸収をゆるやかにする効果があります。
一緒に摂取した糖質がゆっくり吸収されるため血糖値の急激な上昇が抑制できるほか、腸内のコレステロールや胆汁酸に吸着してその吸収を抑える効果も期待できます。
果物に多いペクチン、植物の種や皮に含まれる植物ガム、こんにゃくの主成分であるマンナンなどの粘質物、海藻などに多く含まれる植物多糖類(アルギン酸、フコイダン、ラミナリン)などがここに分類されています。
穀類は精製すると食物繊維が失われる
食物繊維を性質によって2つの種類に分けて解説しましたが、不溶性も水溶性も野菜や果物、海藻などに豊富に含まれる成分です。
食物繊維を豊富に含んだ食材を日頃から満遍なく摂取すれば、どちらの効果も得られやすくなりますが、小麦や米のような穀物の場合、精製して食べやすくすることで食物繊維の多くが失われてしまいます。
腸内フローラの悪化は、肉類などの動物性タンパク質の過剰摂取以外に、こうした穀類の精製による食物繊維の損失も大きく影響していると言えます。
また、精製することで糖質を単独で摂ることが増えると、血糖値の上昇もコントロールしにくくなります。
栄養の吸収そのものが早くなるため、肥満の原因にもなるでしょう。
動物性の食物繊維も存在する
なお、こうした植物性の食物繊維とは別に、キチン・キトサン・コンドロイチン硫酸のような動物性食物繊維も存在しています。
キチン・キトサンはエビやカニの殻などに多く含まれる成分で、摂取すると体内の老廃物や有害物質と結びついて排泄させる効果(キレート効果)が知られています。
コンドロイチン硫酸はムコ多糖類の一種で、動物の軟骨など多く含まれるネバネバ成分で、細胞と細胞を結合させるクッションの役割を果たしています。
なお、肉類には、不溶性食物繊維も水溶性食物繊維も全く含まれていません。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の黄金比は2対1
「毎日、食物繊維をたっぷり食べているのに、便秘気味でお腹が張る」という人がいるようです。
こういうケースの場合、どのような食品から食物繊維を摂っているかというと、不溶性食物繊維だけを積極的に食べているケースが多いようです。
不溶性食物繊維は、便のかさをますように働きますが、摂り過ぎると水分が足りなくなって便がかたくなり、便秘や腹部膨満感などを招くことになります。
水溶性食物繊維は、腸管内の水を吸って便を柔らかくするように働きます。
スムーズな排便のためには、便のかさが増えることと、柔らかくなることの両方が大切です。
そのため、食物繊維は、不溶性と水溶性をバランスよく摂ることが必要となります。
では、どのようなバランスがよいかと言うと、不溶性食物繊維2に対して水溶性食物繊維が1くらいが理想的と言われています。
しかし、摂取量を細かく計算していては、実行継続が難しいので、水溶性食物繊維を意識して多く摂るといいでしょう。
どちらかと言うと、不足しがちなのは水溶性食物繊維のほうだからです。