腸内細菌はアトピー、花粉症などのアレルギーを抑制する
2019年09月30日
腸内細菌にはアレルギー抑制効果あり
日本では、国民の3人に1人が何かしらのアレルギー性疾患を持っていると言われています。
近年、腸の病気やうつ症状・うつ病の人が増えるのと同じように、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、花粉症、気管支ぜんそく、ダニアレルギーなど、アレルギー性疾患に悩んでいる人は多いです。
アレルギー性疾患は、体外から侵入する異物に対して、体の免疫機能が過剰な反応を起こす免疫系の病気です。
花粉や卵、牛乳などの食物は、本来、毒性がなかったり弱かったりするものですが、体内に入ったこれらの物質や成分に免疫細胞が必要以上に反応して攻撃をしかけると、そのときに発生する化学伝達物資が神経や血管を刺激して、目のかゆみや充血、鼻水、じんましん、かゆみなどの症状が起こります。
免疫機能は高ければ良いというわけではないのです。
腸とアレルギー性疾患との関係については、まだ明らかになっていない部分も多いのですが、腸内に存在するTレグ細胞(制御性T細胞)に、過剰に活性化している免疫反応をなだめる働きがあることがわかっています。
Tレグ細胞は免疫細胞の一つで、腸内細菌のクロストリジウム菌に誘導され、腸で作られます。
つまり、腸内環境を整え、Tレグ細胞の働きを十分に引き出すことができれば、免疫細胞の暴走によるアレルギー性疾患の予防になるとも言えるようです。
さらに、アレルギー性疾患と同じく、免疫が過剰に活性化したために起こる潰瘍性大腸炎やクローン病への応用も期待されます。
腸内細菌たちにとって、人間は「宿主」であり、宿主のからだが弱ってしまうと彼ら自身も困ってしまいます。
だから、腸内細菌もアレルギー反応を抑え込んで、宿主を弱らせることのない腸内環境をセットしてくれていたわけです。
このようなアレルギー疾患にも腸内細菌は大きく影響しています。
腸内環境を整え、免疫システムを正常に保つことが大切です。
清潔志向がアレルギーを助長する
なお、アレルギーを防ぐためには、腸内細菌の数が多いのはもちろん、細菌の種類の多さがカギとなります。
腸内細菌の種類を増やすには、乳児期に良い菌も悪い菌も含めて多くの菌に触れ、免疫を学習する機会が必要ですが、皮肉なことに、行き過ぎた清潔志向が蔓延し、日常生活から菌がどんどん遠ざかるようになってきました。
身の回りの品々についている菌はみんな「ばい菌」扱いされて、殺菌・抗菌・除菌されるようになってきています。
こうした状況では、腸内に侵入してくる菌も少なくなり、腸内細菌の種類も少なくなります。
アレルギーを防ぐ腸内細菌の力が弱体化するのは避けられません。
すなわち、現在の日本でアレルギー性疾患に苦しむ人が増えたのは、「行き過ぎた清潔志向」がもたらしたツケなのです。
日常生活からあまりにも菌を遠ざけてしまったために、腸内細菌を弱らせ、アレルギーに抵抗する力を弱らせてしまったのですね。
アレルギー性疾患では、薬で炎症を抑えて症状を和らげる治療が行われるのが一般的ですが、これでは根本的な解決にはなりません。
アレルギー性疾患を克服するには、菌を味方につけて腸の力をつけていくのも1つの解決方法かもしれません。