チクロという人工甘味料の思い出
2020年06月20日
チクロ入り粉末ジュース作ったアイスキャンディー
私が小学生だったのは、1960年代後半です。
時まさに高度経済成長の真っ只中で経済成長最優先の大きなひずみとして様々な公害問題が取りざたされ始めた頃でした。農薬による環境汚染や食品添加物の健康への影響なども社会問題になり始めました。
まだガキだった私が、今でも覚えている禁止添加物として「チクロ」という人工甘味料があります。使用禁止になったのは発ガン性が指摘されたからでしたが、私にとって「チクロ」は夏が近づくとほぼ毎日口にしていた粉末ジュース(ソーダ味とか果汁味のものがたくさん売られていました)です。
暑くなると我が家では母がこの粉末ジュースを使ってアイスキャンディーを作り、冷凍庫に入れておいてくれました。
学校から帰った私は、ランドセルを背負ったまま冷蔵庫を開け、アイスキャンディーを食べながら、友達が誘いに来るのを待っていたのです。
その夏の常備食?であったチクロ入りのアイスキャンディーは、新聞ネタになって以来、我が家からいったん姿を消しました。
母に文句を言うと、粉末のジュースにはガンになる元が入っていることがわかったので、もう作れない。「えっ!それじゃあ、これまで毎年大量に食べていた僕はガンになるの?」と、気弱な私は大いにびびりまくったものです。
日本の菓子メーカーはたいへんにしぶといので、まもなく新たに合成甘味料をいくつも開発し、衣替えした粉末ジュースがお目見えしました。我が家の冷蔵庫にもまたアイスキャンディーが復活したのです。
けれど、新しい合成甘味料は、「チクロ」のべたつくようなしつこい甘さはありませんでした。あっさりとしたアイスキャンディーは、私には少々物足りなかったのです。
その後、粉末ジュース自体が姿を消してゆき、カルピスやコーラス、ミルトン等の乳酸菌飲料などがアイスキャンディーの原材料となりました。
そして私が中学生になる頃には、あれほど楽しみにしていた手作りアイスキャンディー自体が、我が家の冷蔵庫から消えていったのです。