一覧に戻る

乳幼児期における免疫力の成長

子供と免疫

乳児期~幼児期は免疫システムにとって極めて大切な時期となります。自然に免疫力がついた後、児童期を経て小学校を卒業する頃には、身体の免疫システムはほぼ完成してしまいます。

乳幼児の免疫力

生まれたての赤ちゃんは、お母さんの体内でほぼ無菌状態で過ごしてきました。そのままではすぐに病原性微生物の餌食になってしまいます。

 

そこで生後半年くらいは母体の免疫システムがそのまま移行して身を守ります。そのまま移行して赤ちゃんの身を守ります。その間に赤ちゃんは有害無害を問わず様々な微生物との共生が始まります。様々な微生物がまず体表、気管および消化管(腸)等に住み着いてきます。

 

このような人体常在菌との共生によって、人間は悪玉菌の侵入を防いだり、消化を手助けしてもらったり、老廃物を処分してもらったりして健康な生活を送ることができるようになります。同時に、本当に免疫を作動する必要があるときとそうでないとき、攻撃すべき相手とそうでない相手を見極める力をつけていきます。

乳幼児の免疫力の成長

生後半年をすぎるころから、赤ちゃんは時々発熱したり、発疹を出したりするようになります。いよいよ免疫力の出番がやってきました。

 

この乳幼児期に胸腺で作られる免疫T細胞は、その生活の中で出会う刺激に反応していろいろな免疫細胞へと生まれ変わります。この時点でヒトの生涯の免疫反応の型が決まってしまうのです。

 

乳幼児期に、微生物の種類の豊富な家畜や自然の多い環境で過ごすと、様々な微生物への抗体をつくる能力の高い、バランスの取れた免疫細胞群を持つことができるのです。

 

しかし、現代日本の都市型の生活において気密性の高い室内で除菌された環境を保って暮らしている場合は、ほとんどの子供が異物の侵入に過剰に反応する「アレルギー型」に移行してしまいます。

 

一方この乳幼児の時期にもう一つ重要になるのは、母乳依存から様々な食事の消化へ移行することです。この移行の中でヒトは食物を攻撃すべき異物ではなく、取り込むべき栄養素であり、免疫反応を起こさせないという記憶を蓄積させていくのです。

乳幼児の免疫成長のために親ができること

アレルギー体質は清潔すぎる生活環境によって、乳幼児期につくられます。ですから、できることなら適度に不潔で微生物の多い、家畜や自然環境の豊かな場所で乳幼児期を過ごさせてあげるのが一番のアレルギーケア法です。

 

それがかなわない場合には、アレルギー発症を恐れるあまり、すぐに治癒させよういとしないことです。アレルギー体質は「正常な」作動であり、獲得免疫としてのアレルギーは強化されることはあっても一掃されることはありません。

 

ですから、それを前提にアレルギー体質と上手に付き合っていく方法を親子で、時間をかけて編み出していくこと、それが現実的で有効なアレルギーケアです。

 

とくに乳幼児期の発症は、身体の未成熟に起因する部分がとても多いわけですから、身体に負担の少ない対処療法でやり過ごしながら、体と心の成長を気長に待ってあげることが親子双方にとってプラスになると考えます。

ストレスは免疫細胞を殺してしまう

ここで「心の成長」という言葉を使ったのは、免疫システムは「心の安定」=「ストレスの低維持」と深くかかわりがあるからです。

 

生体はストレス(疲労を含めた)への対処法としてステロイドホルモンを分泌してストレス感にマスクをかけるのですが、このステロイドホルモンが免疫細胞を殺してしまいます。

 

ストレスが長引く人はそれだけ免疫不全状態を続けているわけで、この不必要な免疫抑制を繰り返すことが、免疫システムの異常を引き起こしている可能性が高いのです。

 

「子供」であるということは、身体も心も成長期にあるということです。安定するまできちんと成長することを見守る、それが親の基本的心構えのひとつかと思います。