腸もれ症候群(リーキーガットシンドローム)
2020年10月06日
身を潜めている善良な腸内細菌
「あらゆる病気のもとには腸内フローラの異常がある」という考え方は、世界的に広がってきています。
生後3年で決定した腸内フローラの組成が、もしも貧弱ならば、食事や生活の工夫で数の変動を起こすことが免疫力の改善には欠かせません。
反対に、立派な腸内フローラを持っていても、食事や生活の状態が悪ければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
免疫力を高めたり、アレルギーを改善するには、今ある腸内フローラを育てることが大事になりますが、「腸内フローラを育てる」とは、どういうことでしょうか。
3歳までに約100兆個からなる腸内フローラが完成し、約200種類もの異なる細菌が棲みつきます。しかし実際には、200種類の細菌のうち、全体の多くを占めているのは数十種類です。残りの菌たちは、身を潜めておとなしくしています。
この、おとなしくしている細菌たちのなかで、善良な細菌の働きが重要です。ひっそり身を潜めている菌たちを活性化させ、増殖力を高めてあげましょう。
なおかつ、多種多様の細菌が元気で、全体の総数も多い状態が理想です。これが「腸内フローラを育てる」ということになります。
腸内細菌の数が少ないと腸に穴が開く
「腸内フローラを育てる」という活動をおろそかにすると、「腸もれ」という状態が起こります。
腸もれは、現代人の約9割が起こしていると考えられる腸のトラブルで、免疫力低下を引き起こす最悪のリスク要因です。
人の体細胞は、たえず新旧を入れ替えながら、組織の働きを保っていますが、腸壁を築く粘膜細胞は、わずか1~2日で入れ替わり、人体でもっとも新陳代謝のスピードが速いという特徴があります。
このスピーディな新陳代謝を支えているのが、腸内細菌です。
腸内細菌は粘膜細胞の間にびっしりと棲みつき、細胞の生まれ変わりを支えています。
腸内フローラが貧弱で細菌の数も少ないと、細胞の新陳代謝がうまくいかなくなります。
こうなってしまうと、細胞間の連結がゆるんですき間が開きます。すると、腸壁に目に見えないほど細かな穴が開いてしまうのです。
この腸のトラブルが腸もれです。欧米では「リーキーガット・シンドローム」と呼ばれます。
「リーキー(Leaky)」は「もれる」、「ガット(Gut)」は「腸」という意味で、「心身にさまざまな不調を引き起こすトラブル」「多くの重大な病気につながる可能性の高いトラブル」として欧米を中心に注目が集まっています。日本でも、徐々に認知度を高めてきました。
現在、文明的な生活を送っている人は、程度の差はあるにしろ、少なからずリーキーガット・シンドロームを起こしている、と見られています。
なかでも、アレルギー症状の重い人は、この「腸もれ」のトラブルを持っていると考えられています。
腸に細かな穴が開いていると、アレルギー症状が強く現れるようになるからです。