腸内フローラ改善に役立つオリゴ糖
2020年02月18日
大腸まで届くオリゴ糖
オリゴ糖と聞いても、どんな栄養素なのかピンとこない人もいるでしょう。
オリゴ糖の働きが明らかになり、日常の食卓に食品(甘味料)として登場してから、さほど年数が経っていないからです。
オリゴ糖は糖質の一種で、それ以上小さく分解されない単糖類が2~20個結びついてできています。
糖質のなかには、ブドウ糖やショ糖のように小腸で早く吸収されてエネルギーとして使われる成分もありますが、オリゴ糖は人間の消化酵素で消化・吸収されることなく大腸まで達します。
オリゴ糖の歴史
ビフィズス菌は1899年にフランスのティシエが母乳で育てられた赤ちゃんの便から発見したものです。
この発見を機に赤ちゃんの腸内フローラのじつに95%がビフィズス菌で占められていることがわかりました。
以来、こうしたビフィズス菌の増殖を促す「ビフィズス因子」の研究が進められ、様々な物質が開発されてきました。
たとえば、母乳に含まれる乳糖もビフィズス菌のエサになりますが、同時に大腸菌や腸球菌、バクテロイデスなどもエサにしてしまうため、乳糖を粉ミルクに添加しても腸内フローラは十分に改善されません。
過去の試行錯誤を経て開発されたビフィズス因子がオリゴ糖だったのです。
多少の例外はありますが、オリゴ糖はビフィズス菌以外の悪玉菌のエサになることが少ないという特徴があります。
そのため、人工乳=粉ミルクにオリゴ糖を添加することで、赤ちゃんの腸内フローラを多少改善させることもできます。
オリゴ糖の研究が本格的に始まったのは、1980年のことです。
ミュータンス菌(虫歯菌)に利用されない、つまり「虫歯にならない糖」としてフラクトオリゴ糖が開発されたことが一つのきっかけになります。
「オリゴ糖の虫歯予防以外の可能性」について調べていく過程で、腸内フローラに好影響を与えることがわかったのです。
オリゴ糖の種類と特徴
オリゴ糖によって腸内のビフィズス菌に直接影響が与えられるわけですから、食物繊維のように便で悪玉菌がつくり出した腐敗物質を押し出すよりも前に、悪玉菌そのものの増殖を抑える効果があります。
以後、オリゴ糖は「ビフィズス菌を増やす糖」として大きな注目を集めるようになり、下記のような様々な種類のオリゴ糖が開発されることになったのです。
ガラクトオリゴ糖
母乳や牛の初乳に含まれているが、高濃度の乳糖に麹カビの酵素をさせるこで合成することもできる。甘みはあまり強くない。
フラクトオリゴ糖
タマネギ、アスパラガス、ゴボウ、ハチミツなどに含まれているオリゴ糖の仲間で、砂糖に酵素を作用させることで合成できる。
乳果オリゴ糖
砂糖の入ったヨーグルトを発酵させる過程で生成されるオリゴ糖。砂糖と乳糖に酵素を作用させることで合成できる。
イソマルトオリゴ糖
みそ、醤油、清酒などに含まれるオリゴ糖で、デンプンに様々な酵素を作用させることで合成できる。甘みはあまり強くない。
大豆オリゴ糖
大豆を製造する際にできる副産物(大豆ホエー)から抽出して作られたオリゴ糖。一部は小腸で消化される。
キシロオリゴ糖
タケノコやトウモロコシに含まれる食物繊維を酵素で分解することで作られたオリゴ糖。「虫歯になりいくい糖」としても利用されている。
ラフィノース
甜菜(砂糖大根)から抽出された天然のオリゴ糖。砂糖の5分の1程度のさわやかな甘さが特徴。
オリゴ糖の上手な使い方
こうしたオリゴ糖の活用法として最もおすすめなのは、やはり砂糖の代わりに用いるということ。
甘味料としてコーヒーや紅茶に加えるのはもちろん、熱しても変性しないため煮物の味付けに用いても効果が失われることがありません。
お菓子やケーキに加えれば、やさしい甘みがありながら低カロリー、血糖値の上がりにくいヘルシーなおやつが作れるはずです。
このほか、腸内フローラの改善という点で効果的なのは、根菜や豆類などで煮物を作る際にオリゴ糖を加えること。
これの食材には食物繊維が多く含まれるため、ビフィズス菌の増殖を促すプレバイオティクス効果がさらに高まります。
忙しくてなかなか調理が出来ないという人は、朝の起きがけにオリゴ糖をスプーン一杯程度なめるだけでも構いません。
そのまま腸まで運ばれてビフィズス菌のエサになるのでお腹の調子が整いやすく、お通じもスムーズに出るようになります。
オリゴ糖の注意点
注意点としては、オリゴ糖を摂り始めるとお腹の張りを感じるという人が必ずいるということです。
その理由は、わずかですがオリゴ糖を横取りして食べてしまう腸内細菌(バクテロイデスなど)がいるからです。
こうした細菌が出すガスがお腹の張りの原因です。
サツマイモや豆類を食べるとガスが出やすくなるのも、これらの食品に含まれるオリゴ糖が悪玉菌に横取りされているためです。
しかし、腸内フローラが改善されるに従って徐々に悪玉菌は減っていくためお腹の張りも気にならなくなるはずです。