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幸せ物質「セロトニン」

セロトニンは不幸を蹴散らす元気の素

やる気満々の女性

人は誰でも不遇なときや、ついていない時があります。

 

健康そうで体力もある人が突然病気になることもめずらしくありません。

 

こんな逆境のときに、気持ちを奮い立たせ、やる気を起こしてくれるのがセロトニンです。

 

いわば不幸を蹴散らしてくれる「元気の素」ともいえるのですから、これほど貴重な「幸せ物質」はないでしょう。

セロトニンが少なくなると「うつ」になる

セロトニンは、もともとは腸内細菌間の伝達物質の一つに過ぎませんでした。

 

ところが、さまざまな研究によって、その重要な役割が明らかになってきました。

 

いまの日本人にとって、現代病といっても差し支えないくらい増えているうつ病も、脳内にセロトニンの量が少なくなってくると発症することがわかっています。

 

セロトニンは神経伝達物質の中心的な役割を果たしてきましたが、人間の体の中では大半が腸で合成されています。

 

といってもその量はわずかで、人体におけるセロトニンの総量は約10gで、その90%は小腸の粘膜にあるクロム親和性(EC)細胞の中に存在しています。

セロトニンが少ないとキレやすくなる

少し前から、怒ることを「キレる」というようになりましたが、いまでは中年層にまでこの言葉が浸透しているように思えます。

 

社会的にも怒ることが増えているのかもしれません。

 

「キレる」背景には、ストレスをためやすい社会的環境もあるのでしょうが、それにしても短絡的に激怒し、怒りの気持ちを収められない大人が近ごろ増えていないでしょうか。

 

これは自分自身の気持ちや体をコントロールできなくなった結果だと思うのですが、その原因の一つにセロトニン不足があります。

 

セロトニンが減ってくると、怒りやすくなり、時間が経過してもその気持をおさえられなくなってくることが明らかになっています。

 

このような状態はまさに「幸せ」な時間とは正反対であり、言い換えればセロトニンの分泌が十分な状態であれば心身のコントロールが可能となり、怒りとは無縁の「幸せ」な時間が持てるようになるのです。

 

小さなことでいつもイライラし、怒りの炎をうまく消せない人は、セロトニン不足によって不幸を招いているのかもしれません。

セロトニンは自律神経をコントロールする

セロトニンは、脳や体を覚醒させます。

 

自律神経は交感神経と副交感神経に分かれていますが、2つの神経はおおむね相反する働きをします。

 

人間の体は、運動時や興奮時には脈拍が速くなる一方、血管は自動的に収縮し、全身の活動力を上げようとします。

 

これが交感神経の主な働きで、逆に安静時には副交感神経が活発になり、体内は平静さが保たれるようになっています。

 

たがいの神経がバランスをとることで、脈拍、血流、血圧、呼吸などが整えられているのです。

 

就寝中は副交感神経が活発に働き、目覚めると自動的に交感神経が優位に働くようになっているのですが、この目覚めたときにセロトニンが分泌されます。

 

寝起きでボーッとしているときに、脳や体を覚醒させ「やる気」を起こさせるという重要な役割をセロトニンは果たしているのです。

 

そんな気分をもたらしてくれるからこそ、セロトニンは「幸せ物質」と呼ばれているのです。

セロトニン不足はうつ病、自殺の原因となる

セロトニンは幸せ物質ですが、マイナス材料もあります。

 

それはセロトニンが非常にストレスに弱いという点です。

 

逆境に負けない強靭な幸せ物質と、前向きな気持ちを作り出す幸せ物質を兼ね備えているセロトニンが不足すると、これとは正反対の状態に陥ってしまうのです。

 

その結果として待ち受けているのが、うつ病に代表される心の病です。

 

そして、残念なことに、日本は先進国の中でも自殺率が際立って高く、人口に占める自殺率は先進G7で第1位。

 

うつ病が増え、日本人の自殺率が高いレベルで推移している理由については諸説あるようですが、日本人の腸内細菌の減少によってセロトニンが脳内に増えていないことも、自殺率高止まりの大きな原因の一つと考えらます。

睡眠の質にも関わっているセロトニン

うつ病などの心の病にかかる前兆として目立つのが睡眠障害です。

 

不眠症とはまったく縁がない人には、眠れない辛さはわからないもの。

 

人間は一生の約3分の1は眠っている計算になるのですから、その膨大な時間を「幸せ」に送れるか否かによって「幸福度」は大きく違ってくることでしょう。

 

そんな大切な睡眠の質にもセロトニンは関わっています。

 

というのも、セロトニンが多く分泌することが熟睡に結びつくからなのです。

 

眠っているときに、メラトニンという脳内の神経伝達物質が出ていることがわかっています。

 

このメラトニンは「睡眠ホルモン」とも称されることがあり、これが分泌されると、眠気をもよおしてくるのです。

 

いわばメラトニンは天然、無害の「睡眠薬」なのですが、なんとこのホルモンにもセロトニンが影響を及ばしています。

 

セロトニンが日中に作られると、その副産物としてメラトニンが作り出され、熟睡できるようになるというわけです。

セロトニンは作り貯めできない

残念ながら、幸せ物質「セロトニン」は貯めておくことができない物質です。

 

したがって、「幸せ物質」を脳内に保持しておくためには、絶えず作り続けなければならないのです。

 

それには腸内細菌の活躍が必要になります。